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02 家を建てるプロセス  「引越して変わった事」

2003.04.16
12月の暮れに越してきて、もうすぐ3ヶ月が過ぎようとする。
そこで、当初のねらいだった
 · 家族時間の増加
 · 都心のメリットとデメリット
 · キッチンの利便性
 · 洗濯動線
 · 収納
 · 美観
などについて、現時点での検証を行ってみようと思う。

家族時間の増加

夫は通勤時間が往復3時間短縮した。
妻は往復1時間が短縮した。
子供が家で過ごせる時間は、引っ越したため託児施設の
時間が変わったので、妻の帰宅時間を早めた事で大幅に増えた。
増えた分は、子供は睡眠時間と家で遊ぶ時間になった。
妻は調理にかける時間が増え、食事が充実し、体重が増えた。
妻は給食施設の無い託児所へつなぎとして通う娘のために
毎朝、弁当を作っているが、それでも朝ご飯を座って食べ、
紅茶を飲む余裕が生まれた。
夫はノー残業デーは夕飯を作る事になっていたが
通勤時間がかかって、子供たちが待ちきれずにいたのが、
再び夕飯を作ってくれるようになった。
夫のつくる夕飯は子供をさばきながらという訳ではない上に
腕が違うのか、とても美味しい。
子供たちの家で過ごす時間は、
以前はビデオに執着の強かった2歳娘もリビング · ダイニング
自分の部屋 · お兄ちゃんの部屋 · 寝室などと色々な場所で
兄とごっこ遊びをする事が多くなった。
娘は兄がダイニングテーブルで通信教育をやっている間、お勉強と称して
絵を描いたり、工作をしたりしている。
お勉強好きなのは、前の住まいの時に通っていた保育園の影響。
幼いうちから詰め込みすぎて脳が爆発したらどうすんの!
との親の心配をよそにフラッシュカードで娘らに仕込んでいた様子。
物覚えがよく、積極的な娘だけれど、フラッシュカードのお陰なのかは分からない。
とにかくお勉強といえば、カードとか、絵や字を書く事だと思い込んでいる。
「これなーんだ?」「うーんと ·  ·  · 。」というやりとりが面白いようで、
「うーんと ·  ·  · 」の表情を恥ずかしげで考えている表情をやってみせる。
「これなーんだ?」を、先生のようにやれと、色々細かく注文がつく。
息子も同じ保育園に通っていたので、*お勉強、大好き!*
もちろん、水遊びや公園遊びも大好きだけれど。
ドリルとか、好き好き。
こどもなんだから、そんなにやらなくても良いのにとも思うけど
せっかく、保育園がやる気にさせてくれたんだからとも思う。
勉強するのは子供なんだから、娘が邪魔しないようにしてあげたい。
彼女は彼女なりに、何かひらめくたびに歌にしたりして
脳に色々刻み付けているんだろうけれど
お兄ちゃんからすると邪魔なんだと思う。
子供用の耳栓って売ってないし、元々耳の穴の細い息子。
ま、小学校の低学年なんて学校も最初は歩き回る子もいると聞くし
うるさいなかでやれる事も大事。
子供部屋に机は置いていない。けれど、多分置いたとしても
一人の部屋はさみしくて、ダイニングに来る。
当分、母 · 息子 · 娘のごちゃ混ぜで、仲睦まじくそれぞれの事を
ひとつのダイニングテーブルで寄り合ってするんだろうと思う。

都心のメリット · デメリット

都心なので、きっと日用品の買い物に困るだろうと見込んでいた。
昔の友達に会いに行くのに往復6時間ぐらいかかるだろうとも。
電車で移動するのが多くなるだろうとも。
買い物は週末買出し系の我が家の場合、今のところ、全く問題が無い。
隣町の大型スーパーに行くのも、2つ先の駅の専門店に行くのも
住宅地に住んでいて、自分たちの買い物エリアと思っていた範囲より
近いのだ。
都心は町が小さい。駅が沢山ある。小さな町に駅名などの名前が
細々とついているので、隣の町が遠く感じるけれど
住宅地でいえば、同じ1丁目の中とか同じ町内の範囲なのだ。
前の住まいでは家で消費するものを買うのは大変だった。
家で美味しいものをつくって食べたいので、アンチョビペーストやら
いいチーズだとか、ピーナツバターだとか美味しいソーセージなど
ナショナル · ユニオン · 紀伊国屋 · 成城石井などにしか売っていないもの
を結構消費するからだ。
大型のオリンピックに売っている事が分かったので、
隔月か月に1回はリストを作って買いに行っていた。
オリンピックはハム · ソーセージに弱い。その類のものはケイホクという
紀伊国屋などと同等の品揃えの店に買いに行っていた。
土地勘の無い地域だったので、会社の人などに店を聞くところからはじめた。
だけど、住まいの近くじゃなかったので、買うのがが面倒だと
自分達大量に作って冷凍していた時もあった。
大量につくるとなると、卸値で良い肉を仕入れたいし ·  ·  · ということで
これまた、ちょっと遠い店に行くはめになるし、ソーセージの皮のモトで
ある、ケーシングを買い置きしておかなくちゃならない。
いよいよ大量に作って、冷凍する。
ハーブも、大量に消費するので後で忘れずに補充する必要がある。
今はその手のものが、今日思いついて、今日買える。
物価は少々高いかもしれないが、なぁに、自分の時給と考えてみれば
そんなに高い事は無い。
何より欲しいものが、すぐ近くでいつでも買えるのがうれしい事だ。
海側を選んだ事で、海沿いを走っている分には道路が混まない事も大きなメリットだ。
東京は海から内陸、内陸から海または、内陸を横に移動すると渋滞する。
何故か?
1.東京の都心は海を囲むようにあり、週末にはドライバーが少なく、
郊外にはドライバーが沢山いるから。
2.昔から埋め立てをしたお陰で、海側に行くほど町を作った時に
車社会化が進んでおり、道路幅が広いから。
ある日、子供を遊具の充実した公園にと、葛西へ車で行ったら
驚いた事に車で15分で着いた。
この界隈の物価が高くても、子供雑貨が買えなくても、
布団を大型コインランドリーで洗える店がなくても
葛西があるじゃないか!!
クリーニング屋さんを呼べば ·  ·  · という話もあるが、
ドライクリーニングの臭いが苦手。気持ちが悪くなってしまうので、
自分の身に付けるものは布団でも、スーツでもエマー○のお世話になっている。
いつだって葛西に行けばいい。
フランス人がオランダに買い物に行く気分で、葛西に行ける。
前の住まいまでの移動はどうか?
イベント参加のため、前の住まいの方に車で行った。
新居建設中など向こうに住んでいた頃こっちへ来るのに
片道3時間かかった。
なのに!!!こっちから向こうは ·  ·  · 
行きも帰りも、片道1時間だった。
のぼりが混んでいる時間に下り
下りが混んでいる時間に上るからだ。
電車で移動するだろうというのも、みごとに外れた。
1.娘が疲れるとだっこ!の年齢なので、大人の体力が持たない。
2.レジャーは電車で移動できても、1週間分の買い物は
電車で移動ではとても無理。
車で移動することを前提にプランを立てる。
そんな訳で今のところ
都会育ちの私達夫婦にとってのデメリットはといえば
駅まで向かう道が幹線道路なので、通勤時に排気ガスが気になる事ぐらい。

キッチンの利便性

キッチンはクローズドだ。建築家の勧めもあり、ダイニングと
リビングの2箇所に引き戸の出入り口がある。
普段は扉は引き込んであるけれど
お客さんが来たときや、揚げ物 · 匂いの強いものを調理する時、
子供にキッチンに入ってきて欲しくない時に、扉を閉める。
揚げ物をしていて、キッチンに子供が来る事があるので、
寝室よりこっちに鍵をつければよかったと思うことも。
最近は一応、下の娘も日本語が通じるので、
「危ないから開けないで!」娘を見ていてくれる息子もいるし、
ほぼ大丈夫。
ダイニングからは直線でキッチンへ入れるので
ダイニングからはキッチンが見えるけれど
リビングへは出口で曲がるので、リビングからキッチンを見ても
食品庫の扉が見えるだけ。というのも良い。
リビングからはキッチンは見えない方がいい。
キッチンは収納場所がとても多くて、いつも片付いている。
調理台の奥行きがあるので、ちょっとモノを奥においておいても、
手前で作業できる。
食器洗い機もあるが、フライパンや鍋などに
釣り戸棚の水切りが重宝だ。
バックカウンターのガラスの入った釣り戸棚も
バナナやパンを食べ忘れないので良い。
引き出しに食器をしまっているが、
大型のプレートが重いのでどうしても滑ってしまい
2枚、淵が欠けてしまった。
滑らないような敷物ってあるのだろうか?
炒め物や揚げ物の時はキッチンの扉を閉めるようにしているけれど
引っ越して、2ヶ月ほど経った頃、ガラスが妙に曇るなぁと
思って拭いてみたら、結構、油煙が着いている様だった。
月に1度はキッチン扉を拭いたほうがいいみたいだ。
片付けやすいキッチンなので、片付いていない事は殆ど無いが
やっぱりクローズドにして良かったと思う。
食事中もも、リビングでくつろぐ時も全くキッチンが見えないので
くつろげる。

洗濯動線

我が家の洗濯動線はこうだ。
玄関から帰宅する。スーツを着ている人は1Fのクロゼットで
ルームウェアに着替える。
主に2Fで過ごして、3Fの風呂に入り、脱衣所にある収納の
洗いたてのルームウェア兼パジャマに着替えて、寝る。
朝は、1Fでスーツに着替えて出かける。
洗濯は3F脱衣所にある洗濯機で行い、
室内干するものは、脱衣所にある昇降式物干しで
天井近くに干す。
全自動で乾燥までした洗濯物は脱衣所の近くの籠に放り込む。
洗った洗濯物は3Fの寝室で畳む
3Fの脱衣所の収納にしまう。
スーツを洗う時はハンガーごと。
1Fから3Fまで持ってきて洗って乾かして、ハンガーのまま
1Fのクロゼットにしまう。
クリーニングに出す場合は、収納場所も1Fなので便利。
洗濯と着替えは本当に楽になった。
部屋に洋服が散らかる事は皆無になった。

収納

 · キッチン裏
リビングとダイニングの間に本などがたっぷりしまえる可動棚のついた収納がある。
ウィークデー用、週末用の家族全員のメインのバッグもここにある。
掃除機も。工作用品も。通販カタログも。ミシンも。
小学校の低学年のうちは、ダイニングで宿題をするから、教科書もここ。
保育園へ持っていく記名した紙おむつも。
お陰でリビングもダイニングもいつも片付いている。
 · PCコーナー
ダイニングの壁に引き戸があって、そこをがらっと開けると
オフィス用のファイルキャビネットと奥行きの浅いPC用のデスク。
電話。文房具がある。
ファイルキャビネットは、保証書や説明書 · 様様な書類。
子供の作品の一時置き場。パソコン付属品 · メディアなどが入っている。
普段使う書類は引き出し内部にハンギングフレームを使って
取り出しやすくしまいやすくしている。
PCデスクの足元にゴミ箱を置いて、DMなどはすぐに捨てている。
 · リビング
腰までの高さの扉付の収納で、オーディオ用品、ビデオやゲーム
子供のおもちゃがたっぷり入っている。
出しやすくてしまいやすいので、子供もすぐに出して遊んで
自分達でさっと片付けている。
 · 玄関
玄関の壁一面を扉付の収納にしている。
アウトドア用品。レジャー用品。プール水遊び用品。
靴。かさ。お買い物バッグ。クリスマスなどの行事用品を収納している。
 · 子供部屋
当初、売っているものを活用しようかと思っていたが
丁度いいサイズが無いので、後から作りつけの収納にした。
小学生は持ち物が多い。
普段は学校においておくけれど、学期末に家に持ち帰る
鍵盤ハーモニカや絵の具 · 習字道具などや
思い出の品 · 学校の工作で使いそうなのでとってある空き容器
兄弟に触られたくない宝物
いっしょに寝るぬいぐるみ系みんな天井までの棚にしまう事にした。
一番下段は深めの引き出しにして、雑多なものを入れることにした。
着る物を子供部屋にしまわなければ、
あと机があれば事足りると思う。
どうせ、大きくなってもリビングか外で遊ぶのですもの、
子供部屋にしまう必要は無いとおもうのです。
先日工事が完了して、すっきりした部屋になった。
 · 3F廊下
洗濯後の一時置き場。季節外の布団。布団乾燥機。
使う場所に収納できるスペースがあるので、
基本的に、いつも片付いている。

美観

さすがに山嵜建築研究室の作品だけあって、デザインは美しい。
心配していた子供との忙しい生活で部屋が荒れるのでは?
という懸念も、収納やら、動線やら、家族の協力やらで片付いており、
ホテル暮らしというほどではないけれど、ほぼそれに近い感じ。
週に一度、自分達で掃除して、大掃除をプロにお願いすれば
美観は保てるだろうか?
既にダイニング床に拭いただけでは取れないシミが ·  ·  · も、もぅ、どうしましょう。

全体を通して

引越しして変わった事は週末の過ごし方と消費スタイル
必要なモノがすぐ手に入るという事で、
モノを持っている事で、豊かさを計る
ストック的な考えが駆逐された。
めったに使わないアウトドア用品などを持ってしまった事に
少々後ろめたさを感じる。
どうせすぐ大きくなるから、どうせ壊すかもしれないからというのは
子供が小さいから多少はあるものの、
どうせ引っ越すのだからと、間に合わせでとりあえずモノを買わなくて
済むようになった。
消費パターンも以前は
最適な店で、最適な価格で最適な商品を買い、
蟻のように、家に運び込む事を週末の日課としていたが、
今では、最適な商品が近くでいつでも買えるから、
必要なストックの量や種類が激減した。
週末の買い物等の移動に多大なる時間を掛けざるをえなかった引越し前に比べ、
短時間でより楽に移動できるようになった事で、
逆説的だけど、「より大切なことに時間をかけよう」と思うようになった。
より大切なこと。
引越し前は、子供に沢山の経験をさせる事だと思っていて、
週末の度に疲れた体に鞭打って、
多分、古くて狭い集合住宅にいると大人も煮詰まりそうだったから
週末の度に、大きな公園に遊具を持って行っていた。
大きな公園にキャンプ用の大きなレジャーシートを敷いて
木陰の下で寝転ぶ。夫婦の一方は子守りで時々交代する。
週末の買い物をする店の場所と天候や季節 · 子供のニーズなどを
勘案して、公園を選んだものだった。
カードゲームやら、アウトドア用品やら、水遊びの道具を色々買ったものだった。
ばかみたいだけれど、買うことに忙しくて、カードゲームをする時間が無かった。
アウトドア用品は買ったものの、公共デイキャンプ場は
かまどは既にあった。食材だけ買っていけばよかったのだった。
水遊び場では、自然がおもちゃだった。
外で遊ぶのに、買ってよかった遊具といえば、
ボールとか、砂遊びセットだ。
家の中ではプラレールやレゴ。ままごと道具。
昔からある、オーソドックスなもの。
次々に良いものを買っても、遊ぶ時間が無くちゃ仕方ない。
色々な結果的に無駄だった買い物は
より豊かな家族時間のイメージを買っていたんだろうと思う。
今もやっぱり小さな子供のいる家族のレジャーは必要だし、
道具も最低限必要だけれど、いいものを少しだけを心がけている。
それとせっかくの良い時間、
お昼前後のリビングや3Fの主寝室に日が充分に入る時間は
外出するのを避けている。
良い時間に家にいないともったいないから。
大型量販店での買い物は混まない午前中にして、
お昼にゆっくり家でご飯を食べて、のんびりしてから
近所の公園に出かけるというもの有り。
移動時間をかけないで、ゆったりと子供と遊ぶ。
季節によって、家にいるのがいい時間、
外の室内で楽しめる時間、屋外で楽しむのに最適な時間がある。
これからの夏は早朝に緑溢れる公園に行ってみようかと思う。
より豊かな週末とは家族で、ゆったりと楽しむ事ができる週末。
今、この家族一人一人のありのままを季節とともに感じて、
家族であることを楽しむ週末だ。と思う。
家を建てて、そんな時間を手に入れたかった。
何かを買えば、簡単に手に入るかのようにコマーシャルされているけれど、
お金やスタイルだけでは、本当は手に入れる事ができないもの。
愛や時間や手間がかかるもの。一瞬一瞬の輝きを幾重にも積み重ねていくもの。
こんな家を建てたから手に入るものでも、
こんな家に住めば手に入るものでも、本当は無いのだけれど。
家を建てて、引っ越して、
大切なひと時を大切な人と
こんな家で積み重ねていける事が良かった。
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