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04 家を建てるプロセス 「我が家に雑誌の取材の話が来た。」

2003.07.10
普段、メディアから距離を置いている私も、家を建てるなどの目的が
あれば、情報収集の為に、雑誌やテレビを見る。
見ていて気になるのは、人物。
建物はデザイナーモノだけど、人物はモデルでも、著名人でもなんでもない
普通に町ですれ違う、お洒落な一面もあるだろうが、
他人に自分を見る事を生業にしている連中とは違う。
普通の人。
写真には写らない事にも多大な価値を置き、さらに妥協の中で生きている。
そんな我らを、写してどうする。 見てどうする。
こんな家をたてたのは、こんな人たちで、こんな暮らしをしていますよ。
という事なのだろうけれど、 雑誌を読んでいる人は、
自分が住むなら ·  ·  · という事を考えてみているのだ。
施主のプロフィールはテロップやナレーション · 活字で充分。
施主の趣味や生活時間、ペット、子供とのかかわり、どう考えて、どうしたか?
本人が出てきてしゃべるって、映像に堪えられる人は少ない。
しゃべるなら、写るなら、建築家が出ればいいと思う。
建築家が、施主の話をすればいいと思う。
情報の受けてもそれぞれの建築家の作品に現れないポイント 施主の要望をどう、処理するか?
というところがよく見えて いいと思う。
「ふむふむ、この先生にお願いすると、きっと私たちの 要望はこうだから ·  ·  · 、
ああなって、こうなってこうなるのかしら?
それとも、前作のK邸のように、ああなってこうなって ·  ·  · 」
と夢が広がり楽しいはずだ。
見ていて嫌でない素人の施主というのもいる。
が、私たちは、新品でないし、味が出ていない。
丁度、なんというか、手垢がついた状態なのだ。
子供がいてマイホームを持とうという30代〜40代は 美しくない。
そう、自分たちの暮らしより、家族優先。
写真に写る価値より、写らない、 写すと美しくない価値に 生きているのだ。
掃除もしなくちゃならないし、
コップもベッドリネンも色々買い換えたくなっちゃうし。
多分そんな ( 気持ちも時間も ) 余裕がないが。
引越しも、新年度も終わり、残工事もほぼ収集して、
やっとのことで落ちついてきた平和な暮らしが ·  ·  · 。
記念にはなるかもしれないけれど、
う、う、う、う、ん。断わりたいなぁ。
私が写真に写りたくないという理由で、断わる前に、夫にも聞いてみなくちゃ。
もしかしたら、受けたい!と思っているかもしれないし。
できるだけニュートラルな態度で聞いてみた。
「ああ、あの件ね。取材のために、仕事休む事はできないけれど、いいよ。」と言う答え。
施主も写る事になるんだけど、いいの?
「ああ、いいよ」
本当か?Sくんよ。
ふと、結婚式の時のことが、まざまざとよみがえってきた。

結婚式

私は料理が美味しくて、こじんまりしたレストランで
身内だけでやりたかったが、新郎の父が現役という事で
”やっぱり、ちゃんとしたところで”と言う要望で、
”ちゃんとしたホテル”でやる事になった。
「身内だけでいいよね」と言っていたものの、
蓋を開けてみると、夫の来賓は計画の倍の人数になっていた。
結構、派手好き。

結婚式しましたハガキ

たしか、秋に結婚して、次の年賀状と兼用した。
結婚式に撮った写真は案外、二人一緒のスナップ写真が少ない中で、
あれも、これも、「オレの顔がなんか変だ。」という事で
選んだ一枚も、「う〜ん、なんか変だ」と納得いかない様子。
その上、花嫁の私が可愛く写ってない写真にされてしまった。
新郎の顔なんかどうでもいいのよ。結婚式なんだから。
と思いながらも、まぁいいことにした。
しかしね、施主の顔が写るんだよ。本当にいいのか、Sくんよ。
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