U2-HOUSE

05 家をたてました

2003.04.03
この夏に向けて屋上菜園を本格的にスタートしようと思っています。屋上庭園はいまひとつこれと言う雑誌や本がありません。ちょっと考えこんでしまい、なかなか手を出しにくい状態です。また安全のため、暴風や落ち着けるための覆いを作らないと、使えないよくある屋上になってしまうので、何とかしなくてはいけないと思っております。お忙しいでしょうが建築関係者のみなさま御協力よろしくお願い申し上げます。

建築家

好きな建築家の1,2人ぐらいは頭をかすめるが、実際に自分の家の設計をお願いするとなるとなかなか好きだけではうまくいかないだろう。雑誌等でいくらか建築家の名前は知っていたが実際に家を見ていないし、その人自体どういう方なのかも知らない。僕らは土地探しの途中で建築家探しもしなくてはいけないと思い、思案していた。<ブルータス>では有名建築家に家を設計してもらう企画が出たりもしたが、一軍のスター選手にお願いするのはやめようと思っていた。何か作家の言葉や作品自体に僕としてはすでに違和感があったし、権威的な社会で生きぬいている方々だろうから、自信過多で、威張られそうな感じがした。もちろんそうした人の作品で好きな建物もあるけれど、有名ではなくとも才能のある若い方にやってもらった方がいいかなと思った。しかし人生のフィネスも分からない方では困るので、狂った施主の欲望をある程度抑えられる僕よりほんの少し上ぐらいの人がいいと考えた。年令が離れ過ぎていると価値観がやはり僕らとはズレルだろうから。
<新しい住まいの設計>の付録に建築家名鑑というのが付いていたのでそれをぺらぺらめくってオバカな話を妻としていた。「それで誰にしようかね」「あ、この人好きな映画にゴダールとカラックスあげているよ。」「好きなタレント、爆笑問題だって」「好きな音楽、ラシェル · フェレル なかなか分かってらしゃる」「そんな事より住まいに対する考え方は?」「んん、何だかみんなそれらしい事書いているよ」「この人でいいんじゃない。」「この人経歴書いてないし、好きな物も書いてないよ。それにこの写真横向きだ。」「ニヒリスッティックな笑みですね。」「でも、書いてある事は誠実じゃない?」「ぼくと同じ事言ってら。<愛することが出来る家>だって」そんな感じでいつもの様に夕食後の団欒をしていた。
こんな事を何度かしていたが、なかなかこの方と決められずにいた。雑誌の紹介で無料で建築家を紹介するホームページがあることを何となく覚えていた。自分達を冷静に見る事は自分達ではなかなかできないものだ。第三者が選んだ、僕らと一緒にやるパートナーとはどんな方なのだろう。どんな家を僕らは求めているのか、他者が見るとどうなるのか興味もある。最終的にそれを受け入れるか否かは自分達自身なのだから、ちょっとインターネットでやってみようと思った。簡単な質問をいくつか答えると候補が10人出てきた。それ以上は直接、面談しないと絞れないようになっている。もっと知りたくなって、魔が差したと言おうか、柄にも無く積極的に電話をしてみた。その日は休日でこれから散歩に行くとこだったので、相手がこれからでもと言ってくれたので1時間後には自由が丘の事務所にいた。1、2時間くらい話をしただろうか3人に絞られた。質問内容はもう覚えていないが、自分達が作りたい家のイメージとか、建築家に望む年代とか。各々の作品の写真などを見ながら好みの物を捜すようなことをしたように思う。意外にもその中の二人は例の建築家名鑑で候補に上げていた方だったので、何だか背中を押された感じがした。紹介会社ではその場で建築家さんとアポイントを取ってくれ、その日はとんかつを食べて帰った。
後日、第一候補の方と会う事になる。その日はいつも元気でいてくれた息子が急に風邪をひいてしまい朝から熱があった。普通なら僕一人で行くか、キャンセルしたいところだが今日はこの仕事のキイになる日かもしれないと考えていたので、3人一緒に決行した。僕一人では何か悲愴感が出てしまうし、相手の印象をよくするためには、和やかな妻はどうしても欠かせなく思えた。
建築家は2人で現れた。第一印象はこの人は僕より大きいなと思った。一概には言えないが、身体が大きい人はすくすくと育った方が多いと思う。抑圧的な精神、肉体からは、批判性はあるだろうがクリエイティブなものは生まれない。すくすくは僕にとっては○なのだ。もう一人の方は女性で、パートナーとしてやはり設計をやっていると言う。話は質問の様なものから始まり、愚図る息子の相手を妻と交代しながら進めた。僕らとしてもある程度家に対する要望を話し合っていたので、メモを持っていった。今ではこっぱずかしくなるようなまさに欲望の世界だがその時は真剣だった。内容は次の様なものだ。
[主題] 美しい家がいい。内側だけでなく、外観も。きっと愛し続けられる。
[副題] 僕ら3人と時々訪れて来る親が気持ち良く、寛いで住める家。
環境<太陽、光、風、風景、地域>に適応した家
1. みなが集う、明るく、出来る範囲で広いLDK
たくさんの採光、大きな窓、気持ちいい、ペアガラス、吹き抜け、音楽が流れる。
大きなテーブル6人以上 ( 家のコアになる、食事、語らい、勉強、お絵書き、小さな仕事 ) 
話しながら料理が出来るキッチン ( 対面式 ) 
2. LDKに続く屋外。たとえばデッキスペース、テラス、コート。
緑、花、屋外での食事、雨でも冬にも使えるとなおいい。
3. スペースに余裕があればリビングに続く和室。客間にもなるが日々の生活にも使える寛げる部屋。
 ( 小さな仏具、生け花、お茶 ) 
4. 浴室 気持のいいバスタイム、足を伸ばし、ぼっと瞑想する。
白い光、湯煙、窓の外の小さな庭<バスコート>、浴室乾燥機、清潔な
5. 子供室 成長していく子、青年期には孤独に沈考できる机、眠るベット、小さくていい、ここから旅立つ、いろいろなことを考えられるといい
6. 主寝室 家の中で一番重要で大きくするべきなんて言っていた本もあるが僕らとしては寝れればいい
7. 書斎  妻は翻訳の仕事をしている、コンピューター、メール、机と椅子、大きな辞書が置け、タイピングができること
8. 音楽室 ピアノを楽しむスペース、ギターを弾く場所、ボタンアコーデオンの練習
9. 屋上菜園
たぶんこんな事を書いた紙を持っていた。後日山嵜さんにもその様な文章を渡したと思う。これを読んで設計家は引いてしまったかどうか、聞いてはいないが、少なからず今出来た家に反映されている所もある。
その時の建築家の印象は誠実だが何か冷たい感じがした。「家づくりは夢の中でやるものではない。チープな家は所詮あきますよ。」と言っていた様に思う。もっともではあるが反発もあった。家に夢を託すのは当たり前、チープな家を望んで作る人はいない。自分の許す限りの予算の中でやることは決してはずかしいことではないなんて。パートナーの方がそんなギャップをある程度緩和してくれているように思えた。まあお互いさまかな、僕も妻が必要だったし。その建築家は明らかに僕とは性格が違うし、嗜好も違う感じはしたけれど、話している内にこの人は信じられると直感した。最後まで仕事をやり抜けるだろうと。第2候補の方はヨーロッパの生活経験があるし、料理好き、会ってはいないがリベラルな印象があり、僕らと車が同じだというので嗜好性は近いのではないかと考えていたがそんな事はどうでもよく思えていた。違う嗜好の方の家の方が、僕らが住んだ後どうせ自分達流にするのだから、より深みが出るかもしれないなんて考えていた。ちょっと気になったのは結婚されていて、お子さんも居られるというのに、あまり生活臭みたいなものが感じられなかったことだ。家庭生活がない人でも家の設計はもちろん出来るだろうが真に僕らの望む家を作れるかは疑問で、建築家のエゴの固まりの様な家にされるのはごめんと思っていた。
ぼくらは家に帰る時にはこの人に決めていた ( 彼等は何を思って帰ったかは知らないが ) 。しかしまだ土地は決まっていなかったので設計の契約はまだなのに土地探しも知り合いの不動産屋にあたってくれるとも言っていただいた。実際紹介された土地も何度か見に行ったこともある。せっかくいい建築家さんと会えたのにズルズル土地が決まらなくてほったらかしはまずいし悪いと思えた。しかし市場に出る物件には限りがある。インターネット上の物件もほぼ見つくしていた。がある日最初からチェックをしていた土地だが値段が高く、考えていなかった物件が値段が下がって出ていた。土地の広さ、大体の住所が同じだったのでたぶんあれだと分かった。この土地を最終的に見に来てもらい、「それでここで家が建ちますかね。 ( 人間がちゃんと住めるということ ) 」と聞いたら「はい」と言っていただいたので決断をした。建築家さんに会ってから二か月余り後のことである。
そして土地の契約をした後、設計の契約をした。もちろんあの横向きの、好きな物も何も書いてない建築家さんとだ。
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