U2-HOUSE

07 家をたてました 「基本設計2 ( 構造と屋上と・・・ ) 」

2003.06.10
山嵜さんとお合いした時には言葉すら喋れなかった息子も今では4才、幼稚園児だ。行き始めの頃はおかあさんと離れるのが辛くて泣いていたが今では楽しそうに通っている。展覧会、学芸会、運動会、花火大会、たまに送り迎え等で幼稚園に行くこともあるがその建物はなかなかすばらしいのであります。60年代に作られた鉄筋コンクリートのものです。何がいいかと言うと繊細でダイナミックなのであります。最近の建築屋さんはこぎれいでモダンだけれど、ワインじゃないがダイナミックな建築が見たいです。
最近では建物雑誌も買わなくなったが、ブルータスの約束建築の住宅が大体出来たというのを書店で見つけて買った。正直言って安藤さんはやっぱりいいなあと思った。ちょっとした操作で方向性が出るというか素晴らしくなってしまうと言うか。施主も偉いといってしまえばそれまでだが人を引き付ける力がやっぱりすごいなあと思いました。北山さんはナイスファイトのローコスト ( うちの2倍近くある建築面積でうちより安い。好みじゃないけど ) 、偉い。伊藤さんもさすがの余裕です。内藤さんと岸さんは途中でリタイヤで ·  ·  ·  ( 2人ともわりと好みの作家でしたが ) 。まあ、こんなこと建築家さんだと好きには書けないだろうけど、素人の感想ですからご容赦を...。
特に途中リタイヤは当事者ではないので本当の事は何も分かりませんが僕としては悲しい感じがした。建築家さんとしてはやむを得ないのだろうけど、建て主側としてはやっぱり悲しいことです。力のある施主が今までは多かったのでしょうが、もう注文建築は大衆化しているのです。弱い人だっていい家が欲しいんです。施主とぶつかる時に、なぜそうしたいか、そうしなければならないか熱意を持って説明したのだろうか。相手を何とか納得させる努力をしたのだろうか。 ( 住宅は疲れるからか ) 結局住宅向きではないのかなあなんて考えたりして。どこか傲慢な建築家さんが見え隠れしてしまう。もしもこれが必死な新人だったら、食らえ付いてでもいろんな努力をするんだろうけど、やっぱり偉くなると大変ですなあなんて...、偉そうに書いてしまったのはつまり若い建築家の方に言いたいんです。これと同じことはもうひとつの保守的な社会である病院についても言えると思う。古い医者は権威の力で患者をみてきたけれど ( 患者も権威を欲していたし ) 、そろそろそれも崩れて来ている。 ( まだまだ旧体制だらけの世界ですが未来はこちらに向かわざるをえないのです。 ) インフォームドコンセントなる言葉はすでに常識化し、ちゃんと説明しないといけないのだ。「言ったよ」では意味がない。何故そうしたいのか、しっかりこちらの意図、誠意を伝えなければいけない。突然プランを変更する時にはその前に、「何で」を説明すべきなのは他の社会では当たり前のことなんだから。
話を我が家に戻そう。お題は構造と…だ。家の構成は地下1階、地上2階立てに言わずともきまっていった。地下は一般的に鉄筋コンクリート ( 以下RC;Reinforced Concrete ) が多い。中には木造を地下から立ち上げる家もあるが、基礎を兼ねているのでRCが順当だろう。我が家も暗黙に決まっていた。さて、1、2階だ。山嵜さんは土地を見に来た当初からRCを口にしていたがそれはなぜなのか聞きかされてはいない。ミニ開発の4軒で割った右の手前の敷地なので裏に1軒家がある。まあ密集しているという理由もあるのかもしれない。防火、遮音、耐震等のメリットがあるのも確かだ。それでも屋上緑化がプランに上る前からの話なので、やっぱりなんでだろーなんでだろーなのだ。一般住宅は木造が多い建築家さんなので、僕らが若い施主と言う事もあり、単にRCがやりたかったのかも知れない。その時点で僕は山嵜さんのRCの家をほとんど知らなかったし、一般的に木質系作家に分類されていたのではないだろうか。大断面集成材を使って空間に柱が入らないスパンを取る開放的な家が雑誌などでは取り上げられていた。上から下までRCで統一した構造デザイン的明瞭さ、 ( 結局RCはコストが高くなるが ) 一つの構造にすることで無駄がなくなるとも言える。
設計途中、1、2階は木造になりかけたこともある。僕らとしても地下がRCだから上を木造にすれば2つの構造空間を体感できるのもいいし、何と言ってもコストが抑えられるなあなんて思っていた。 ( コストは残念ながらと言おうか当たり前と言おうかやっぱり重要で、家が出来るできないまでかかわってくる。つまり悲しくもなり嬉しくもなる精神にまで作用するのです。 ) 
コンクリートのイメージは一般的には決していい物ではないのではなかろうか。コンクリート、ゼネコン、コンサバ、コン畜生、コンが付くものは自然志向の人々にはマイナスの代物だ。しかし、コンクリートはいわば自然素材の原料にほぼ起因する。石灰石を主に粘土、珪石を混ぜ合わせ細かく均質な粉にし、それを高温でローストし、石膏を混ぜ粉にしたのがセメント。それに砂、小石を混ぜ水を加えて練り混ぜたものだ。幾らか混和材料もコンクリートの品質を改善するために加えられるが石灰岩のもつ凝集力で固まったものといったところか。 ( サザレイシの様に ) それに引っ張り力に強い鉄筋を補ったものがRCだ。構造上の沢山のメリットもあるが素材の持つ質感もメリットにも成りうるし、またデメリットにも成りうる。まあ建築的 ( 躯体性能、素材のイメージ ) 良し悪しより自分にとっての住みやすさや自分と向き合った結果の選択としてのRCのが重要で、死んだ住宅になるかそうでないかのポイントにも成る得る。前回に触れたB案は最初は恐らく1、2階は木造であったが屋上緑化をしつこく訴えていたので、最終的にRCが選択された。それにもいろいろ経緯がある。A、B案の二者選択を次には迫られた。Aはボツと心の中では決まっていたのでもう1案見たいなあとも思ったのが正直な感想だ。しかし1つのプランを錬るには当然山嵜さん側に労力、時間をかけさせてしまう。「予算不足でもう1案は無理です。降ります。」なんて言われたら悲しいし、それに薄ぺらな案では見ても意味がないと思い、決断をしてB案を選択した。それに連動するように屋上緑化を訴えていった。敷地のスパッとした切り方や内部が明瞭なプランなのでイメージは出来ていた。明瞭な小さいロジカルな箱だ。現代建築だからまずは陸屋根だろうと踏んでいたので、 ( その時点では模型等はなかった。 ) 敷地が狭いため庭を取るなら屋上だな、と。それにあまりに単純でロジカルな建物なので屋上を造って、とぼけなければ愛にかける。とも思った。
もう1つ違う空間、何度か口にしていたが切り捨てられていた屋上をプランに載せるために熱意を持って欲しいと言う気持ちを伝えるファックスを送った。
その時のファックスの一部です。
01/06/12
「さて、ここからは改めて屋上についてのご相談です。毎回話題にされはしているものの今のところボツになりかかっている屋上ですが、やはり是非とも作っておきたいというのが正直なところです。ここまで屋上菜園と呼んで話をしたりしていましたが、僕たちが希望しているのは屋上全面に深さのある畑ではありません。畑はごく一部で十分で、残りは芝生の様なものとかで庭の代わりを時間をかけて作っていけるスペースがあればいいと思っています。屋上菜園はRCというのが当たり前なのでしょうが、かりに木造の範囲内の屋上とはどの程度までなら可能でしょうか。
屋上の緑化が現実すれば夏の暑さを極力抑えるためにも1つの方法になるでしょうし、また単純に上に上がれるというだけでもハイサイド又トップライトの窓の掃除が容易になるような気がします。雑誌か何かで、屋上庭園を作ったら晴れの日にはほぼ毎日3世代の家族が入れ替わり立ち替わり屋上に上がるようになったというのを読んだことがあり、なんかいいなと単純に思いました。現在のB、C案 ( C案はB案をいくらか変更したもの ) だとデッキ部が室内と一体となった使い方になるようで ( これはこれで望ましいのですが ) 、余計に屋上という外のスペースが欲しいと思っています。」
リッチな予算でないので余分なものは捨てるのが鉄則だが陸屋根ならそんなに無理ではないはずだ。前のマンションでは4畳半ぐらいのベランダがあり、ズッキーニの花やコルニッションやハーブ等の栽培やもちろん食事や小さな耐火煉瓦のピザ釜や七輪陶芸まで外でいろんなことを楽しんでいたし、それだけに飽き足らず家の近くの区民農園を借りて野菜を栽培してもいた。 ( すいかなんてできようものなら嬉しいものですぜ。 ) そんなカオスを屋上にのっけてしまおうと目論んだ。
どんなスタディーが事務所で行われたのか僕らは知らない。これでだめなら決断をし、諦めようと思っていたが次回の打ち合わせの時にはもう一層平面図が描かれていた。2階ベランダから外階段でつないだ屋上だ。少しでも余分なものを作る事はコストに反映する。階段、手すり、水道、電気等。ペントハウスはなかった。また屋上の存在は構造にも影響する。ポジティブに屋上を使う場合、強くなければつぶれてしまう。ましてや屋上緑化で木造は不可能ではないが建築家さんとしては容認しにくいだろう。
今度はコストを現実に見つめないといけなかった。人間ひもじくなると気持ちまで寂しくなる。買い物はストレスの発散になるが買えないことが続くとストレスフルになる。そんなものではないだろうか。たとえ小さい家でも地下あり1、2階立てを総RCでやるには僕らの予算では…。仮に器は出来ても中身がマイナス、マイナスで寂しい思いをしそうな予感がした ( 実際そういう事はその後出てくる ) 。山嵜さん設計のT3-houseを前に見せてもらったことがあり、木造だが屋上があった。芝マットやデッキ、プランターを使って軽いものにすれば、まあいいじゃないか。RCを薦めたい山嵜さんに対し、沈んでいく気持ちの中で僕らは木造でできる範囲内の屋上がクレバーだと思えていた。
その時のファックスの一部です。
01/06/23
「構造について
屋上緑地をRCで、予算内でいけるのであればそれはそれでいいのですが、居住空間の基本的な施設をどんどんカットしていくRCは僕らの求める方向ではないように感じます。たとえば浴槽の埋め込みをあきらめるのは年を取った3人の両親〈同居ではありません。たまに来るだろうということ。〉にはかなり酷なように思えます。予算のないRCでは壁面の多くを打ち放しにするのはやむをえないのでしょうし ( 最初の頃にRCでいきましょうと言った山嵜さんに対して、あまり好きではないと返答した僕に、RCを強調するのではなく、ナチュラルな感じでできると説得してくれましたが ) 、床や階段が木質系でないもの等は僕らが求める方向からそれる様な感じがします。正直に言うと木造でできる範囲内の屋上、T3houseの様な屋上、土のない芝生とプランターぐらいの屋上でいいのではないかなあと思っています。…」
結局、山嵜さんはRCで行けると判断した。木造だとスラブが厚くなってしまうとも言っていた。一枚の陸屋根が無理になると言うことか。
鉄骨はなんで考えなかったのかそれはたいした理由はありません。地下がRCだからです。ライトコンストラクションもいいけど低予算では何かバラック建築ぽくなるのが目に見えていたからです。山嵜さんは何を思ったか?
もう一つ構造に関係して表装について書こうかなとも思ったが今回はこれぐらいにしときます。次回はへルツォーク&デ · ムローンから始めます。
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