U2-HOUSE

14 家をたてました 「音環境と音楽」

2004.06.03
今回は音環境についてというか、家には形の無いもの ( 音とか風とか ) も存在するんだと言うことをただ書きたいと思って、だいぶ前に基礎設計の話を書いていてつまらなくなってほったらかしにしてあったものの続きを含めて書いてみようと思います。ちょっと両方中途半端ですが、あしからず。
土地を探していたのは2000年の秋から、買ったのが2001年の3月、山嵜さんと正式に契約したのが4月、第1案が5月頃、6月には改良第1案と第2案ができてきて、決断を迫られ…。それぐらいまではもう書いたのでその後からにしましょう。
第3案が見たいとわがままを思いつつ、第2案を選択しました。あまりにシンプルな土地の切り方、これは新鮮だったです。僕もできるだけこてこてしない方がいいと考えていましたが、その上をいく〈単なる長方形〉でした。立体で言えば〈単なる箱〉です。よくある取り方としては第1案のような駐車スペースを中に入れる建て売り型?か、前面を幾らか細くして車の幅や長さを確保して、建物の後を太くするタイプが定石かなあと思っていました。その場所に現実に家を建てる人間とすれば、普通の駐車スペースの横幅がなく、ミニマムで、確かに2CVは入るけれど、車を買い替えたりするのはなかなか大変になるし、もし家を売ることになった場合は駐車スペースがネックになって資産価値は落ちるかなあ、なんて思ったりもしましたが、でもいいかと決断しました。
それから僕らがしたことは消えかけている屋上を確保すること。これは屋上緑化と言う現代建築家さんのやりたい気持ちを刺激する ( ? ) アイテムで勝負しました。何度かの攻防の末、屋上到来です。 ( 今出来上がったこの家に1年半住んでいますが、僕らにとって屋上があって本当に良かったと思います。無かったらかなりつまらない家のように思います。 ) 
そして7月、建蔽率の取り方が間違っていましたと淡々と説明され、ガクンと容積が減った案に変えられた。3ヶ月もかかって何やってんだ、おい。いい加減にしてくれよ。基本だぞ、それでもプロか?。何度か ( 少なくとも3度は ) 聞いたはずの話だぞ、もー。と、正直思いました。その修正した案は正面側をそのサイズに合わせるために単に切り捨てたものでした。ここで僕はちゃぶ台をひっくり返して、白紙から考えろとつっぱねた。わけではない。そんなに強い立場ではございませんので。とにかく設計図と睨めっこ。ストレスの中で考えた。この切り捨て方では前面の空いたスペースでは車は置けないなあとか、南側横を切り捨てて車幅を確保してもらった方が賢明かなとか、そうすると生活スペースが細長くなるかな。それにモジュールの問題とかあるのかなあなんて。
結局、その単純な切り捨て方でいいのかもしれないなあとむりやり考えるようにした。13平米くらい小さくなったが、設計する側から見れば、コスト的に楽になるのでしょうし。施主としては悲しいことですが、現実問題コストマネージメントなんて素人には無理ですからね。
ばらしちゃいますが、ぼけ話は他にもあって、東側の外階段の目隠しに当初の案ではすぎ板が貼ってあったのですが西日を遮るためのものであったらしい ( 本当は東です ) 。場所をしっかり把握していなかったのか、冗談か。ルイス.I.カーンに怒られるぞ。
わが家の基本設計はあっという間に7月で実はほぼ終わっています。もちろん細部にはまだいろいろ決めなくてはいけないことがあったし、実質的にはそれ以降も事務所内ではいろいろ大変なことがあったと思いますが、本質的には終わっていたように思います。しいて言えば、1階の間切り、つまりルームを作る方を僕個人としては望んでいましたが、予算やコンセプト、建築家の思いもあり、ホールと言うことになっております ( 正直言うと、プチメゾンにホールなんぞちょっと笑っちゃいましたが ) 。たしかに1階を閉じてしまうと所帯じみてしまう感じもあるので、今はこれでよいと思っております。
閉じるということの意味に個を守ると言う感覚があると思います。茶室でもそうですが守られた小宇宙なのであります。これはこれでまた十分書ける題材ですが今回はもうひとつ閉じる、閉じないで影響すること、音環境についてであります。
精神の高揚、感動、深み、生活やちょっとした瞬間の感動、人のやさしさ、美しさ、そうゆうもの好きです。そんな中でもとりわけひきつけられるのは、形がなく瞬時に消えて行くもの、音楽。音楽、もっと言ってしまうと音、もっともっと言ってしまうと物理的に音にさえなっていなくてもいい音楽的なるもの、好きです。
わが家は地下1階、地上2階、屋上ありのスモール住宅です。室内は三層ぶち抜きの空間です。つまり音環境は三層ぶち抜きで、良く言えば地下で鳴らしたリヒテルの平均率のレコードは教会のようにまわり、悪く言っちゃ、三層筒抜けで夜に珍しく友達なぞが来て2階に集まり、なおかつそれが声のデカイ方だったりすると、地下の寝室でおねむタイムの息子はうるさ〜い、寝られません、ということになる。さすがに地下のカーブにいれば音も遮断されますが、良い意味でも悪い意味でもなかなかの音環境であります。
閉じるということの意味に個を守ると言う感覚があると思います。茶室でもそうですが守られた小宇宙なのであります。これはこれでまた十分書ける題材ですが今回はもうひとつ閉じる、閉じないで影響すること、音環境についてであります。
精神の高揚、感動、深み、生活やちょっとした瞬間の感動、人のやさしさ、美しさ、そうゆうもの好きです。そんな中でもとりわけひきつけられるのは、形がなく瞬時に消えて行くもの、音楽。音楽、もっと言ってしまうと音、もっともっと言ってしまうと物理的に音にさえなっていなくてもいい音楽的なるもの、好きです。
家という物理的に存在するものを考えることは形の無い音や詩情まで思索しなくてはなりません。そしてそんな形の無いものこそ本当はかなり重要で、人間の深い部分に影響するのでしょう。
前回にも書きましたがダイニングキッチンにはテレビがありません。そのかわりといったらなんですが音楽はあります。僕らの年になると後ろ向きに、過去の音楽ばかりなってしまうことも多いのかもしれませんが、なるべく自分の足でレコード屋 ( 一般的なショップ<HMVとか> ) に行って自分の臭覚で新譜ものも捜して来て、聴いたりします。大衆音楽が面白くなければまだまだ僕の知らない過去の素晴らしいクラッシック音楽はあるし、多分一生分はあるだろうから助かります。蛇足ですが最近のお気に入りは昨年暮れのものですがEddi Readerの〈Sings The Songs Of Robert Burns〉やDavid Sylvianの〈Blemish〉、クラッシックではHenriette Puig=rogetのピアノで〈Promenade a Travers L'Europe du Sud a L'Epoque Baroque〉。中古屋で捜しているのはMalavoiの〈Jou Ouve〉。売っていたら教えてね。興味があったらご試聴あれ。
話が飛んじゃいましたね。そう音環境。縦型ワンルームは普通のワンルームよりもっと音は直にきます。たまに来る両親にはあまりいい環境ではありません。個をまもる、落ち着ける客間がないのですから。またピアノを入れることもかなり意識していましたが、実際ピアノがくるとかなりしんどくなるかもしれませんね。
わが家はもちろん全てをクリアーする家ではありません。人間の欲望は多岐にわたりますから形にすれば相反するものを同時に求めたりします。そういう所を明確に見つめ闘う家がいいのではないでしょうか。何度か書いたと思いますが、建築家の独走を施主さんは許してはいけませんし、施主さんの欲望の塊の家も大概ちぐはぐです。出来てしまったものを変えて行くことは無理なものもありますが、その中で何とか考えてできる限りがんばって住みやすく、僕らの家にして行きたいと思います。そんな手をかけてもらえる家はいい家なのかもしれませんね。
わが家はきっと息子が個を求める頃にどこかを閉じることになるだろうと思っています。音環境、個を守るために。
それでも今はこのまま、当分このままです。
あなたの家はどんな音環境ですか?
音楽が鳴っていますか?
風は通りますか?
空気はどうですか?
鳥のさえずりは聞こえて来ますか?
今日も窓の外には、つーつぴい、つーつぴいとシジュウカラが鳴いています。
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