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11 家をたてました 「屋上菜園」

2003.11.19
建築家の方々ご用達の花木といえば、姫シャラ、やまぼうし、生垣のあかめがし ( レッドロビン ) 、グランドカバーの玉龍と芝、というのがよくあるところ。それしか植物がないのかい、と突っ込みたくもなるけれど、建築的語彙として植栽はまだ付属品ぐらいの位置なのでしょうか。公庫の高規格住宅工事融資適用のためだけのものではないし、ましてや生垣助成のためのものでないのは確か。
確かに姫シャラややまぼうしの姿は綺麗で僕も好きですが、もう少し植栽に、建てる側の人たちの目が向いてもいいんじゃないかと思います。たとえば小さな都市計画でさえ街路樹が植わっていると何だか気持ちいいし、夏には木陰ができ、草木の冷却効果でかなり涼しさを感じることも確かです。また一戸建てでも各々の家が木の一本でもあれば街全体に緑は増えるし、いい感じになると思います。そんなことはみんなわかっているのでしょうが実践となると ·  ·  · 。掃除が大変とか、面倒くさいなどと言わずに当たり前の事ぐらいに考えられるといいのにと思います ( 理想論でしょうか ) 。
昔の家は植栽を含めて考えられていたものが多いように思うのですが、最近の家の多くは、家だけでいっぱいいっぱいって感じで、あってもカッコや機能でとまってしまっている感が否めません。相手が植物なのだから、何というか、もっと根本的に愛が足りないように感じます。たとえば屋内に大きな竹ややまぼうしが地植であったりするのはカッコいいのだけれど、色艶が悪かったりして、何だかかわいそう、一生箱入りだなんて ·  ·  · 
植栽の仕事は庭師やランドスケープデザイナーがやるもの、なんて言わず、ディレクター的に統括するのが建築家の仕事だとしたら、施主も含めてもっと深く考えて見るべきなんじゃないでしょうか。
さて屋上緑化です。
雨ばかりの今年の夏は作物の作柄にかなりの影響を与えたようですね。やはり夏は暑くないといけないなとつくづく思いました ( 勝手なものです ) 。
わが家の屋上菜園の初年度は30〜40点といったところです。ちゃんと収穫できたことがまずよかったし、自信になりましたが、屋上自体が殺風景でぼくら流にするにはまだまだでした。6月には念願の屋上の手摺りをもう一段高くし ( 関係者のみなさま、雨の中、ありがとうございました ) 、今まで45cm位しかなかったのが90cmに伸びました。費用は思った以上にかかってしまって ( 夏の賞与はふっ飛びました ) 、覆い ( ラティスを見積もってもらっていた。もっともラティスはあまり好みではないのですが ) には到底予算が回らず、よしずを横に並べ高さ120cmぐらいの覆いをしました。これのおかげでかなり防風効果、防鳥効果が出ましたし、僕らの居心地も格段に良くなりました。安いガーデンベンチを1つ買って、夏には夕食後に何度か花火をしたり、星や月を見たりと、屋上に上がる回数が断然多くなりました。さすがに寒くなってくると足も重くなってしまいましたがその対策として小屋についてなども、本当に作るかどうかは別として、考えています。それはまたのお楽しみということです。ちなみに<小屋の力 マイクロ · アーキテクチャー>  ( ワールド · ムック社 ) は興味深い本でした。
昨年秋に入居して以来、たまに乾いた土が飛ばないように水やりをするぐらいで、そのままほったらかしにしておいた屋上ですが、2月より土づくり、3月にはジャガイモ、4月終わりにはなす、きゅうり、トマト、5月はズッキーニとすいかを植えました。途中小物のラディッシュを植えたり、昨年借りていた区民農園から持ってきた里芋といちご、紫蘇も植えましたが、紫蘇はもの凄くたくさん増えました。ジャガイモは根ものなので土さえあればカラスに襲われることもなく、7月に何回かに分けて収穫し、バケツ3杯分ぐらいとれました。今回は一般的な男爵とメークインで、息子もフレンチポテトを喜んでくれました。きゅうりの苗は接ぎ木したものは風で折れてしまい、買いなおしたシンプルな苗 ( こちらのが当然安い ) を途中ビニ−ルの覆いなどで凌いで、何とか20本ぐらい出来ました。5,6本はカラスにやられたので途中からネットを畑にかけるようにしたところ効果てきめんで、危険を察知したのかそれ以後はやられませんでした。トマトはたくさんできたのでおすそわけしました。季節の野菜はその季節に食べるのが美味しい、これは当たり前のことですが栽培をするようになってから実感できたことですし、化成肥料など余計な肥料も使わずにすみ、やっぱり安心で嬉しいです。それに、お天道様や雨が味や量に影響するのが明確にわかります。 ( ワインも同じですね。 ) 今年のズッキーニは日照不足、雨でさっぱりで花だけしかできませんでした。実は花をてんぷらにして、お塩かけて食べるとおいしいんです。すいかは夏休みの旅行に行っている間に雨でやられてしまいましたが、それでも小さいのが一個だけできました。日照不足のため、なすやオクラは量こそいま一つでしたが、10月中旬ぐらいまで収穫できました。
都会での屋上は主に土、風、鳥 ( カラス!!! ) を克服しなければいけません。土は重量の関係で ( わが家はお金の関係も ) ある程度の制約を受けます。一般的に屋上緑化は軽量土壌を使うことが多いのですが、有機栽培 ( 化成液肥を使いたくない ) や軽量土 ( バーミキュライト、ピートモス、パーライトなどを多用すると飛散してしまうことも考慮しなくてはいけません。 ) のデメリットを考慮するとできれば普通の土の方がいいのです。また防水、防根、排水、保水、土の深さ等を考えて計画されています。躯体のひび割れがあった場合ちょっと心配もあるのですが、防水、防根処理もタケイ進化防水 ( あまり屋上緑化防水としてはメジャーではないかもしれませんが ) でいけるということで採用になっています。排水はプラスチック製のネットが敷いてあり、その上に軽石層、そのまた上に黒土をのせてもらっています。計画の段階ではここまで資金計画には入っていなかったのですが、おそらく山嵜さんの頭の中には屋上が芝生で緑化している姿まで入っていたのでしょう。やりたかった気持ちを汲んでホームセンターまで付き合いまして、高麗芝を買わされました。
しかし芝に関してはなかなか上手くいきませんでした ( 自己責任です ) 。高麗芝等の暖地型芝は3,4月に植えるのが一番よいそうで、9、10月も不可能ではありませんがその後冬眠期に入りますので根は張るのですが春以降葉っぱの成長はいま一つです。目地を取り過ぎたのも痛かった。5〜10cmもあけてしまったのでずっとうまらず、芝のメリットが出せないまま一年が経ってしまいました。平張りでやればよかったです。何度か目地を消すために芝を移そうとしたのですが根が張ってしまい、軽石層までへばりついて思うようにはできずに余計にでこぼこになったりしました。また土が薄く栄養が足りなかったせいか ( 黒土のみ ) 成長があまりに遅く、屋上に行くといつも泥だらけになってしまいました。今年は雨が多いのもその要因です。屋上に上がった直ぐのところから芝なので ( 常に通路になるため芝のダメージが多い ) 芝の位置など今一度考え直しています。また暖地型芝は冬枯れするので茶色くてあまり好きではありません。ウインターオーバーシーディングをして通年緑にするためには高麗芝よりもバミューダグラス ( ティフトン芝 ) やセンチピードグラスの暖地型芝をベースにして、シーディング様にぺレニアルライグラスを選ぶのがいいのではないかと考えています。今年は高麗芝があるので引っこ抜くのもかわいそうなのである程度直して終わりにしました。
屋上緑化は自分にとっての住みやすさや自分と向き合った結果の選択として我が家に張り付きました。
構造のRC、屋根としての屋上、表装、断熱材としての土、緑。躯体と並列に考えられているといっていいのかもしれません。エコの観点から施行することや語ることもできますが ( ヒートアイランド現象の防止、断熱作用 ) 、野菜や果物の栽培、土いじり、水やり、お月様やお星様を見たり、ぼっと風を感じたり、瞑想したり、そんなリアルなことのほうが僕らにはいい感じです。結果として後からエコが付いてくればいいです ( 雨水再利用はできませんでしたが ) 。視覚的だけでなく触感的な感じです。
夜、屋上に行くと歌も出てきます
「あの 子は どこ の子 こんな夕暮れ♪」
浅田美代子、もちろんキイははずします。
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