U2-HOUSE

21 家をたてました 「adieu」

2006.04.05
子どもが生まれ、漠然と家を考えだしたのが1999年、Cチャン ( 2CV ) が来たのが7月、山嵜さんに初めてお会いしたのが翌2000年11月、2001年3月4日我が家の土地の日、新宿で契約を済ませ、ちっさな子どもを連れて、家族3人でレストランで乾杯。設計に入ったのが同年4月、2002年2月着工、9月23日完成、入居、そしてへなちょこなコラムを書き出して3年が流れ、2006年3月最終回です。
じゃまたねでおわかれはよくありますよね、see you again とか au revoir も基本的に同じですね。でもadieu はちょいと違います。厳しいし、クールだし、人生があると思います。大好きなフランス人の友だちに僕が日本に帰る時、言われた言葉です。
C’est la vie.というのを日本語にすると“それは人生”ですが、含んでいるものは厳しく、クールでいて、もっと大きくダイナミックな根本的な愛に満ちあふれている気がします。そういう気持ちを込めて今回はAdieuです。というわけで最後に僕が思っているこれからの建築について ( 偉そうですが生き方 ) と山嵜建築について少し書きます。
ルーブル別館やジャンヌーベルなどのいわゆる有名建築家の建築は見せる建築 ( 立体だけではなくイデを含んで見せるもの。思想だけのものさえある ) だと思います。家がそうあっても別にかまいませんが、僕個人としては生活のスペースが辛いものがはたしていい家なのでしょうかと保守的に考えます。建築はたぶん一番遅れた芸術?で、未だに作家主義のど真ん中ですから、逆に言うと、だからしぶとく強さがあるのですがそろそろそこから抜け出さないと時代遅れで現代建築とは古代建築になってしまうのではないでしょうか。扱うものが重いので動きが遅いのはしょうがありませんが、自我を主張することが芸術ではないってことに真っ正面から向き合わないとモーツアルトはでてきません。則天去私です ( 夏目漱石ではなく、中国の思想です ) 。街づくりや国づくりは行政がやるものと考えていては永遠にはじまらない。一人一人の内部から真剣に考えていかないといい家、いい街、いい国、いい世界なんてありえない。戦争がひとりひとりの内部の暴力性を見つめないと永遠になくならないのと同じですよね。
昨年12月から建築業界は大変な事件が発覚して、みなさまそれぞれいろいろ考えることがたくさんあると思いますが、ピンチはチャンスでもありますので、やれることからこつこつと ( 西川きよし〜 ) やって行きましょう。インチキはしょせんだめなのです。
お金の力があらゆることに影響します。現実問題当たり前のことです。それでもそんなのとは別の次元に人間の力、意志、愛、なんていうものもあります。前にも少し書きましたがスピリチュアルなものとただの物質の違いです。
建物にも単なる物と家と言うべきプラスアルファの物があるのです。イデ ( 頭で考えたもの ) が入るのもいいのですが、愛を入れた家のがいいですよね。たとえば現代建築はシンプルであることのベースを、捨てる ( 合理 ) ことから考えますが、未来建築は一つの物を大事に扱うことをベースにするべきだと思います。
金金金の時代です。体を駆使せず金を転がして儲ける時代です。だからといってそれで幸せでしょうか。リッチより豊か ( 本当の豊かはある意味貧しさを含みますが ) を考えたほうがいいのではないでしょうか。中途半端に捕われていると結局自分の人生を棒に振るのではないでしょうか。
頭で考えることから ( 生産性、合理性、現代建築 ) もう一歩進めて、あらゆることからもっともっとちゃんと考える ( 総合性、バランス、時間軸、未来建築 ) に移行していきたいですよね。金銭や合理ばかりの観点からもっと大きな動きの中で考える時代はとっくに始まっているのです。建築もそろそろどうでしょう。別に新しいことを書いているのではないのです。当たり前のことだと思います。
山嵜さんは別荘建築が巧みかもしれませんが、本質的には東京の人です。そして下町のおぼっちゃまです。凛とした品があります。アールトに通じる美しさもあります。これからの10年の作品を僕も注意深く見ていきたいです。もちろん施主のみなさまもとことん戦ってください。ご自身のために、ご自身の家のために。みんなのために。
また、もしかしたら山嵜建築をお願いするかもしれまへん。 ( もうこりごりでしょうが。 ) 
人生は複雑ですよね。いろいろな矛盾もありますよね。ハイホーだけの人生なんてくだらないし、つまらない。ディープばかりではつぶれてしまうこともあります。人間だったらプラス思考だけでは免疫やられちゃいますよね。マイナス思考だけでは鬱鬱しちゃいます。もちろん家も同じ、明るいだけより、暗さも大事だと思います。中国の陰陽学説のごとく、陽はあふれやすいので陰を補うことを忘れずに。
また建築家のプランに対して施主がいやいや光線だけ発するのではなく、ちゃんと考えて行動することが大事だと思います。こんなこと伝えたいです。
家を建てました、最後まで読んでくださった方、これを辛抱強く掲載してくださった方がた、どうもありがとうございました。
我が家 ( 生活 ) はこれからも続いていきますが、僕らのこのコラムはそろそろお役目ごめんです。
山嵜さん心よりどうもありがとう。
これからもいい家にしていきます。
家を立てる幸せを ( 辛さを ) 十分楽しんで下さい。
2006年 3月 桜日   世田谷区  U2houseにて
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